住宅の内部では、主に「追入ノミ」と呼ばれるものを使います。
ホゾ穴をつくったり木の表面を削ったリする用途がよく知られていますが、
他にもいろいろな場面で役立つ道具で、その使い方は無限にあるとも言えます。
ノミで木を叩くときには細心の注意を払います。
大工になっ方ばかりの頃、「スミを半分に落とせ」と教えられるのですが、
最初は意味がわかリませんでした。
木に記した細い線を伝統的に「スミ」と呼ぶのですが、
そのスミの線幅を半分一分ける位置に刃を入れろということだったんですよ。
それほどの精度が必要なんです。
ですから今でも、一撃に込める思いというものがありますね。
市販されている追入ノミは十本組が一般的です。
この十三本組は、私の出身地でもある新潟県のノミ鍛冶職人さんに特注でつくってもらいました。
銘は家紋清久。
大工のあいだでは有名な方だったので、どういう風につくっているのかを知リたくて、
帰省時に工房へ立ち寄らせてもらったんです。
おそらく5時間以上、居させてもらったと思います。
「研いでみなさい」と言われて、その場で私が刃を研ぐ様子も見てもらいました。
こうして、自分が持っている技術や大工としての想いが伝わった結果、
特別につくってくださることになったんです。
言葉では説明しっくいのですが、量産品とは精度も使い勝手もまったく違うんですよ。
今でも帰省のたびにお伺いしています。
工房では、ノミにこだわる大工さんや建具屋さんとも知り合いました。
ただ、何より勉強になるのは、職人さんの仕事への姿勢や人との接し方ですね。
いつも、ひと皮むけて帰路に着きます。
ノミのおかげで、大工としても人としても成長させてもらっているんです。
大工・宇野 元