脇取鉋(ワキトリカンナ)

木材を加工する道具には、さまざまな種類があります。鉋(かんな)はその代表格で、面を削る作業で使います。この脇取鉋(わきとりかんな)も鉋の一種に分類されます。木製の台に刃を仕込んだ基本構造も、木材の面を削るという目的も、鉋と同じです。ただ、実際に使う場面はかなり限られています。最も多い用途は、鴨居の溝の側面を削ることでしょう 。

 

鴨居の溝の幅は21ミリが一般的です。昔は、大工が溝を掘るところから仕事をしていたようですが、近年では材木屋さんが機械で溝を掘る加工まで済ませてくれることが多いです。鴨居は、はめ込んだふすまや障子などの建具をスライドさせることが目的ですから、溝があれば、役割そのものは果たされます。しかし私は、材木屋さんから届いた木材の溝に指先を当て、滑らせながら表面を必ずチェックするようにしています。引っかかる個所がないか、ざらざらしていないかなど、仕上がり状態を触感で確認するのです。そして、もし滑らかでない場所があったら、脇取の出番となります。

 

溝の側面に刃を当てながら削っていく際、注意しなければならないのは木目です。面に刃を滑らせるとき、刃の先端が食い込みやすい木目だと、刃が刺さってから内側に向かって進んでしまい、結果的に削った木が折れるなど平らでない面に仕上がりやすくなるのです。ですから、使うときには事前に木目をしっかり確認するところから始めます。

脇取は、右勝手用と左勝手用の二本で1セットとなっています。理由には木目が関係しています。たとえば、右勝手用を使って、刃先が食い込みにくい溝の側面を削ったとします。その側面を上手く仕上げられたとしても、同じ脇取を反対側の側面で使うときには、滑らせる方向が逆側となります。すると、右勝手用の刃先が食い込みやすい木目に当てることになります。そこで、同じ木目方向で削れるよう、左右用それぞれの脇取が用意されているのです。

 

今や使用頻度がとても減った道具ではありますが、いつでも使えるよう手入れは欠かしません。現場の作業終わりに、大工同士で練習の機会をつくることもあります。創建舎の社員大工は、道具を大事にして技術力を高め合うことが好きなんですよ。

 

岡田 和也