この道具は「自由がね」と言い、写真では同じサイズのものをふたつ並べています 。
自由がねの用途は「角度を写し取ること」です。
ネジを緩めて基本となる角度が出ている場所に2枚の板をピッタリとあてがい、そのままネジを締め角度を維持。
同じ角度にしたい場所へ自由がねを移動してあてがい、墨を付けたり鉛筆で印を付け、元と同じ角度をコピーしてしまうのです。
よく使うのは、斜めに木材を組み合わせる場面が連続するシチュエーションです。
たとえば、勾配のある屋根。
水平と垂直に組み合わせることが多い床と壁と異なり、勾配のある屋根は斜めの角度で木材を組み合わせる場面が多くなります。
勾配に関わる基本部材に、垂木(たるき)と呼ばれるものがあります。
隣り合う部材に合わせて端を斜めに切ったり溝を斜めに切り出した状態に加工しながら、必要な本数を並べます。
こうした加工の場面で、勾配を自由がねで測り、部材に角度を写し切ったり削ったりします。
一般的な分度器で測っても同じ角度で加工できることになりますが、現場では数字よりも実際の精度の方が重要であり、角度を数値化するよりも、そのまま写し取ってしまう方が間違いありません。
日本には数百年前から続く三角関数や微積分など数学分野の概念も反映された高度な方法論「規矩術(きくじゅつ)」というテクニックがあります。
規矩術を理解できると自由がねの応用力も高まります。
長年培われてきた技術や理論を現代の住宅建築に生かしながら、より良い仕事をしていきたいですね。
岡田 和也