私は、創建舎が住宅を建築する際に、基礎工事を手がけている鳶のひとりです。
鳶というと、今では高所で作業する職人というイメージが強いと思いますが、本体の鳶は、地ならし、基礎工事、地鎮祭など幅広く仕事をこなしていたんです。
父からは、「自分の世代の鳶は、どの分野であっても対応できた」と聞いています。
時代とともに、専業化が進んでいったんでしょうね。
基礎工事には、さまざまな工程があります。
そのうちのひとつが、針金状の結束線を使って鉄筋同士を結束させる作業です。
そして、この作業に欠かせないのが「ハッカー」という金属製の道具。
中央部分がへの字に曲がっていて、先端は尖ったカギ状になっています。
網目の滑り止めが付いた持ち手は、中空のパイプ構造なので、への字の下側部分が自由に回転します。
使うときには、まず2つの鉄筋が接している部分に、U字型に曲げられた結束線を下から通します。
次に結束線のUの部分にハッカーの先端を引っかけ、さらに下に伸びた2本の結束線を束ねた状態で絡め、手元でハッカーの持ち手を3回転から3回転半ほどぐるぐると回します。
こうすると、テコの原理が働き、しっかりと鉄筋同士を素早く結束させることができるんです。
簡単そうですが、実はちょっとしたコツがあります。
結束線を引っかけるときに、結束部が二重になるようにすると強度が増すんです。
竣工後には隠れてしまいますが、私は人に見られて恥ずかしい仕事はしたくありませんし、常により良い仕事をするように心がけています。
関口組・関口 和久