ひと口に「鋸」と言っても、いろいろな種類があります。
地域差もあって、欧米の鋸と日本の鋸は刃の向きが逆なんです。
欧米では押して切るつくり、日本では引いて切るつくりとなっています。
大工が使う鋸は、近年では替刃式が主流です。
切れ味が悪くなったら、柄の部分から刃を外して交換できるんです。
もっとも私は、刃を交換できない昔ながらの両刃鋸を愛用しています。
片方の刃は粗く、木目に沿って切るときに使います。
もう片方の刃は細かく、木目を直角に切るときに使います。
半年に1回くらいのペースで目立て屋さんに出して、刃の研ぎと調整をしてもらって、
切れ味を維持するようにしています。
普段、よく使うのは刃渡りが短めの八寸の鋸と、やや長めの九寸の鋸です。
八寸は窓枠や建具柱などの加工、九寸は間柱などの加工に使います。
中でも思い入れが強いのは、目に見える木材に使うことが多い八寸です。
やはり、自らの手と鋸で丁寧に仕上げたいという思いが湧いてくるんですよ。
実は父も祖父も大工をやってきた家系で、この両刃鋸は、祖父から譲ってもらったものなんです。
小学校の図工の授業で木を切る実習があって、そのときも祖父の鋸を持って行きました。
クラスメートとは違う良い道具を使っている自分が、とても誇らしく嬉しかったことを覚えています。
高校卒業後に大学の建築学科で学び、一時は建築士を考えたこともありました。
しかし、血筋なのでしょうか、やはり現場の仕事が好きで大工の道に進みました。
もっと腕を磨いて、技術で認められる大工になりたいと思っています。
大工・栗田 友仁