このノミは世界にひとつしかありません。
というのも、私が自分で考えてオーダーしたものだからです。
「捻り鏝鑿」という名前も私が命名しました。
刃先から柄にかけて、金属部分をひねるように曲げているところが特徴です。
床をつくるとき、床の土台部分の木材をくり抜いた穴に柱を差してから、
床材の板を張っていきます。
このとき、床材の厚さぶんだけ柱の下部を削って、差し込むように床材を入れるんです。
すると、柱と床材がぴったりとくっついて、すき間ができず、美しく仕上げられるんですね。
この柱の下部を削る際に使っています。
普通のノミでは、水平に保ちながら削っていくのが難しいんですよ。
こうした作業用に、金属部分をL字型に曲げた「コテノミ」という道具もあるのですが、
もっと使いやすい形状があるのではないかと考えていたところ、ひねった形状を思い付いたんです。
初めてのオーダー品だったので、精密な木型まで用意して発注。
四ヶ月後に完成品を手にしたときには感動しましたね。
ただ、年に一~二回しか出番はないんです。
それでも、良い仕事ができるようになったので満足しています。
ノミなどの刃物は手入れが大事で、特に研ぎは欠かせません。
普段、私が使っている仕上げ用の天然砥石は、人工砥石で言えば一万番手くらい。
プロの料理人が使うものと同等です。
そこまでの切れ味が必要かと問われれば、正直、わかりません。
そもそもノミは、目に見えない部分で使うことが多いですしね。
でも、創建舍の大工は皆そういう気質で、凝り性の私には合っているんです。
大工・岡田和也