創建舎が手掛ける住宅で、建具に関わる仕事をしています。
建具の範疇は広く、玄関のドア、室内の引き戸、和室の障子や襖、
クローゼットの折れ戸、キッチン収納の扉など、さまざまあります。
仕上がりの美しさはもちろんですが、日々の生活の中で必ず使うものなので、
開け閉めがしにくい、引っ掛かるといった不具合が生じない実用性が何より大事です。
折尺は、折りたたみ式の測る道具で、物差しの一種です。
ただ、建具職人は本来の目的とは違った使い方をよくします。
この折尺は1枚が2ミリ厚の板でできており、
たたみ方次第で2ミリから20ミリまで2ミリ刻みで厚さを変えられます。
そこで、工事状況をミリ単位で確認するときに使うのです。
たとえば、一般的な敷居の溝は深さ4ミリですから、2枚を重ねた状態で溝に当てれば、
ぴったりなのかはみ出ているのかを、物差しより簡単に確認できるわけです。
また、溝の幅は21ミリなので、そのまま折尺を横にして目盛りを見れば、
すぐに誤差の有無がわかります。
深さを測るだけでなく、隙間を確認するときにも使えます。
一般的な開き戸の場合、天板と引き戸のあいだは上が3ミリ、下が10ミリです。
その隙間に、折尺を通して動かせば、不具合がある部分で引っ掛かりが感じられるのです。
また、引き違い戸の隙間も、折尺を差し込むことで、
戸が反っていないか、真っ直ぐ取り付いているかをちゃんとチェックできます。
もともと私は建具職人ではなく、営業職です。
現場に出入りしているうちに、多忙な職人の仕事を手伝うようになり、
気付けばいろいろと学ばせてもらっていました。
木製の建具は、日々の生活で使われている空調の影響を受けやすいため、
1年点検の際に調整させていただくことがあります。
そんなとき、建具の奥深さと、機械にはない人の手仕事の素晴らしさを感じます。
これからも、喜んでいただける建具の仕事を続けたいですね。
株式会社サカモト・毛利敏夫