叩き鑿(タタキノミ)

2019年の夏に創建舎の大工になりました。

大工仕事は4年ほど前から始めています。

もともと東京出身なのですが、最初に大工の仕事に就いたのは関西でした。

ただ、住宅の仕事は少なく、主に店舗づくりに関わっていました。

しばらく経ってから、そこで知り合った先輩大工から声が掛かり、

東京に戻って、文化財修復の仕事に携わるようになりました。

そして文化財修復の仕事が完了したのち、

しっかりと住宅づくりの技術を学びたいと改めて考え、創建舎の門を叩いたのです。

叩き鑿は、木を削ったり刻んだりする道具です。

刃先を材木に当て、柄の上部を金鎚で叩いて使います。

主な用途は、2つの材木を接合するための「ほぞ穴」の加工です。

開ける穴の大きさによって、使う刃の幅も変わってきます。

まだ経験が浅く、いろいろな刃の幅を揃え切れていないのですが、

この細い方の叩き鑿は長く使っていきたい一本です。

実は、東京に戻るきっかけとなった先輩大工からの譲りものです。

仕事帰りに一緒に食事をしたあと、その日がたまたま誕生日だった私に渡してくれました。

自分の道具箱からひょいと取り出して、「これ、使いなよ」と。

今は入手困難な「長弘」の銘が入っていました。

ただ、そんな希少性より嬉しかったのは、私が持っていないサイズを選んでくれたこと。

おそらく、このサイズを私が持っていないことを知っていたのだと思います。

最近は、構造材の加工精度が高くなっているので、叩き鑿の出番は少なくなっています。

それでも、木の住宅づくりには欠かせません。

創建舎の先輩大工は技術力だけでなく人間力も高い方が多いので、叩き鑿の使い方を始め、

大工に必要な技術と知識を教えてもらいながら、自分を成長させていきたいと考えています。

目標は、早く一人前になること。

今の環境を無駄にしないで、いろいろと吸収してきたいと思っています。

 

大工・平松涼介