私は普段、現場監督として家づくりに携わっています。
現場監督は、設計プラン沿って、
大工や職人さんがスムーズに仕事にできるようにする仕事です。
そのとき手放せないのが「巻尺」です。
洋裁などで使う巻尺と違って、帯の素材は金属製で、
本体側のストッパーで帯を留める機能が付いています。
製品によっては、先端にマグネットが付いているものもあります。
使う場面は多岐に渡ります。
更地に建物の位置を落とし込むときや、
基礎工事の段階で基礎を木の板で囲むときには、正確な距離を測ります。
木工事に入ると梁や柱などの構造材がサイズ通りか確認し、
水道・ガス・電気・空調などの工事を担当する各業者さんが入るときは、
帯を建材に当てがって鉛筆で印を付けるといった定規のような使い方をします。
外構工事では、1メートルあるリ20ミリ程度の勾配がつくよう、
帯を立てて高さを測ります。
見方目にはわかりにくいのですが、
そうしないと、雨水がちゃんと流れていかないからです。
「こうした作業の多くは、図面を形にするためのものです。
ただ、タイル貼りや造作工事など微調整が必要になる場面では、
実際に巻尺で測りながら、現場判断で進めていくことがあります。
とにかく、着工から引き渡しまで常出番があるの
で、現場監督には欠かせない道具といえます。
高校時代に建築の道を志したときはわからなかったのですが、
今の私の仕事は”現場を整える”ことだと思っています。
巻尺は、そのための道具のひとつです。
そして巻尺を使う場面で、大工や職人さんたちと過ごす時間が、
実は家づくりにとって大切なのだと考えています。
現場監督・笠原 紀男