どうも、仲間です。
今回は、先日行ってきた建築の展覧会の中で、
この住宅は、20世紀の大建築家ルイス・
カーンの設計は、建築のあらゆる要素ごとの役割を整理し、明確に「役割分担」する事で独自の意匠性や使いやすさを実現しています。フィッシャー邸はそれが最もわかりやすく表現された住宅だと思います。
□2つの箱の役割分担
カーンは、フィッシャー邸の連なる2つのボックスを「リビング・キューブ」と「スリーピング・キューブ」と呼びました。リビング・キューブはLDKのみのダイナミックな空間で、家族が集ったり、来客を招いたりする役割を持った箱です。スリーピング・キューブは、寝室や浴室など、静かに一人でゆっくり過ごすような役割を持った箱です。2つの箱の役割を明確に分ける事で、パブリックとプライベート空間がハッキリするので、住む人の行為や気分に合わせた居場所が生み出されています。
□窓の役割分担
フィッシャー邸に限らず、カーンは窓の役割分担を強く意識していると思います。
「風景を取り込む窓」と「風を取り込む窓」の2つです。
風景を取り込む窓は、開閉の機能は持たせず、大きなFIX窓で大胆に外の風景を取り込む事のみの役割が与えられています。
風を取り込む窓は、木扉の開閉で換気する事のみの役割を持ち、ガラスは使われていません。
この明確な窓の使い分けが内観からも外観からも独自の表情を生み出しています。
□材料の役割分担
フィッシャー邸は石造の基礎の上に木造のボリュームが載った形をしています。
石造の基礎は、地面の湿気などから住まいを守り、安定した住環境を生み出しています。また石造の内部にはランドリーやボイラー室が入っており、火や熱を扱う場として石の空間は安全で適した配置になっています。上の木造空間に伸びる暖炉も石造になっており、空間のアクセントとしても機能しています。
木造の内部は、住まい手が暮らす場になっており、木の温もりや香りが感じられる優しい空間を演出しています。
カーンは常に建築の本質を見つめ、問い直し続けていたのだと思います。
その姿勢が、独自の思想やデザインに繋がっていったのでしょう。
ちなみにカーンは代表作のほとんどが60歳を過ぎてからの設計であり、大器晩成の巨匠として知られています。ある方がカーンに、あなたは60歳になるまで何をしていたのですか、と質問をした所、カーンは一言「勉強していた。」と答えたそうです。本当に建築設計という仕事は長い長い道のりなんだな、と思わされるエピソードですね。
(仲間)

隠された3つ目のボックス(物置)。今回の展覧会で初めて存在を知りました。