建築のレスタウロ

こんにちは、仲間です。

日々家づくりに携わっていると、最近はやはりリノベーションや部分改修の依頼が多くなっているような気がします。僕は、こういった古くなった建築物を直して使い続ける事にとてもポジティブなイメージがあります。それは学生時代にヴェネツィアを中心としたイタリア旅行をした事がきっかけになっています。

ヴェネツィアは、街全体が文化遺産保護エリアに指定されており、ほとんど新しい建築物が建てられる事がありません。現地の建築関係者の仕事は、ほとんどが改修です。そんな環境で「直す」仕事をし続けて世界的に評価を受けたのが、カルロ・スカルパ(1906~1978)という建築家です。僕も実際にスカルパの改修の仕事を見て、建築物を直す事のカッコよさを強く感じ取りました。

ブリッジや奥の建具は新しく挿入したものだが、新旧部材の境界が分からないほどに調和している。

スカルパの改修の凄さは、新しい材料が元々の空間に違和感なく溶け込んでいるところです。それでころか、新しく挿入した材料が古い材料の良さを引き立てているようにさえ感じます。イタリアでは、この様な改修の仕事のことを「レスタウロ」と言います。これは単に直すというだけでなく、古いものの中に新しいものを付け加えて新旧の調和から価値を見出す創造的な修復という意味だそうです。スカルパは、まさにレスタウロという言葉の通りの仕事をしていると全身で感じました。

スカルパの仕事は、そもそもがイタリアの何百年という歴史を持った建築物の改修だからこその美しさであることは間違いないでしょう。ですが古いものに新しいものを挿入する行為には、国や時代を超えてレスタウロをする事ができるような気がしています。

自分の身近にある直す仕事の中で、スカルパのようなレスタウロを見出していきたいなと、ふと思ったりしています。