たためる椅子

どうも、仲間です。

最近、ずっと欲しかった家具を買いました。

それは、建築家の吉村順三がデザインした「たためる椅子」です。

吉村順三作品への純粋な憧れもありましたが、一人暮らしの狭い部屋で、コンパクトに収納できる座り心地の良い椅子が欲しい、という希望にピッタリ合ったのが、この椅子を購入した決め手でした。

□座布団のような椅子

吉村順三は、この椅子の開発にあたってこの様な言葉を残しています。

「必要な時に必要な数だけとりだして使える日本の“座布団”は、昔の人々の残してくれた素晴らしい生活用具。座布団のように簡単に小さく畳めて持ち運びも便利で、掛け心地は勿論ですがオブジエとして形がよい、狭い所にも仕舞える椅子をつくりました。」

まさにこの言葉の通り、食事や休息の時にパタパタと開いて座り、用が済んだら畳んで収納する座布団の様な使い方をしています。

また、一般的な折りたたみ椅子は、あくまで仮設的に座るためのものというイメージが強いですが、この椅子は常設の椅子にも引けをとらない座り心地があるので、長時間座っていても全然疲れる事がありません。

横から見た姿。ブログ表紙に載せた初期スケッチのイメージに近い形で仕上がっている。

□カラクリ好き

椅子の畳み方はとてもシンプルで、よくできています。戸袋収納の扉や回転式電話台など、住宅設計の際も様々な可動部のカラクリを試みた吉村順三だからこそ辿り着いた発想だと感じました。これだけの可動部がありながらも細部が複雑化せずスッキリしている所も、長く考え抜かれた結果なのだと思います。(開発に4年の歳月を費やしたそうです。)

□木材へのこだわり

吉村順三は、この椅子のヒンジを木材で作ることに強いこだわりを持っていました。

理由はメインの構造部材にベイマツを採用している中で、ヒンジが金属では痛々しく思えてしまうからだそうです。確かに硬い金属が負荷のかかる接合部に使われていると、柔らかい木材をいじめてしまうイメージは感覚的にもよくわかります。金属の代わりに選ばれたカシの木(硬木)は、ベイマツにもよく馴染み、優しい印象を与えながらも、ヒンジの役割を十分に果たしています。木材の気持ちになってモノづくりができる吉村順三の感性が、この椅子の居心地良さをより確かなものにしている気がします。

ベイマツの構造部材とカシのヒンジ

使い始めて2ヶ月程が経ちましたが、すっかり生活必需品になってしまいました。

特に建築家の作品と気負う事もなく日常生活に溶け込み、さりげなく日々の暮らしを豊かにしてくれている所がこの椅子の凄みであり、吉村順三が最も意図していた事なのかもしれません。

(仲間)